使用貸借土地上にある建物の補償についての考え方
2019年01月19日/ 補償等に関する業務関係

喜納(清淳)行政書士事務所
( 特 定 行 政 書 士 )
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1.使用貸借及び賃貸借並びに借地権について
(1)法的定義付け
使用貸借土地上にある建物の補償については、使用貸借及び賃貸借並びに借地権についての法的定義付けを明確にしておく必要がある。
① 使用貸借:使用貸借(しようたいしゃく)は、当事者の一方(借主)が無償で使用及び収益をした後に返還をすることを約して相手方(貸主)からある物を受け取ることを内容とする契約。(民法第593条)
② 賃借権:賃貸借(ちんたいしゃく)とは、当事者の一方(貸主、賃貸人)がある物の使用及び収益を相手方(借主、賃借人)にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うことを約することを内容とする契約。(民法第601条)
③ 借地権:借地権(しゃくちけん)とは、借地借家法上の概念で、建物の所有を目的とする地上権または土地賃借権をいう(借地借家法2条1号)。なお、借地権の付着した土地の所有権は底地と呼ばれる。
(2) 具体的に借地権とはどんな権利か?
借地とは他人の土地を建物所有を目的に借りること。また、借りていれば全てが借地権としての権利があるのか、個々の賃貸借状況に照らし合わせて判定する必要がある。
借りる目的(建物を建てること、電柱を立てること、田や畑を工作すること)及び有償か無償かによって発生する権利が異なる。
他人の土地を建物利用を目的で地代を支払って借りことを一般的には、借地権と呼ばれている。
従って、青空駐車場とか野積みの資材置き場、ゴルフ場などのために借地している場合は借地権には含まれない。
借地権には賃借権、地上権、使用借権(借主が貸主から無償で物を借り受けて使用する権利のこと)、土地の使用貸借の場合は借地借家法の適用は受けない。)、などの種類がある。
一般的には借地権と言えば「賃借権」のことをいう。
(3) 借地権の成立要件
・「建物所有を目的とする利用権」である。
・賃貸借契約を締結していること。
・固定資産税・都市計画税以上の地代を支払っていること。
2.使用貸借とは
使用貸借は、要物・片務・無償の契約である。(民法593条・597条)
(1)使用貸借とは
① 使用貸主の義務
契約が無償であることから貸主は借主に対して目的物の使用収益を許容する義務を負うのみである。
目的物の修繕や瑕疵への担保責任もない。(民法596条)
② 使用借主の権利義務
(ア)目的物の性質によって定まる用法に従い、その使用収益権を持つ。(民法594条)
(イ)第三者に使用収益させるには貸主の承諾がなければできない。違反すれば契約の解除ができる。(民法594条3項)
(ウ)借主は善良な管理者として保管義務を負う。
(エ)借用物の返還時期は、契約で定めた時期に返還しなければならないし、返還時期を定めていない場合でも使用収益をするのに足りる期間を経過したときは、貸主の請求に従い直ちに返還しなければならない。(民法597条)
(オ)借主の死亡により使用貸借は終了する。(民法599条)
(カ)使用貸借による権利については、借地借家法関係の法令の適用はない。
このように使用貸借は多くの場合、貸主と借主との間の特別な人的信頼関係(例えば、親族関係など)を基盤に成立しているもので、その権利性は弱く、財産的価値は極めて低いものといえる。
しかしながら、財産価値補償や生活再建的損失補償を行う観点からは、この権利性の弱さをもって、損失補償を制限すべきでないことは当然のことである。
(2)使用貸借への補償
使用貸借による権利は、その態様が賃借権と同程度のものから、一時的使用、あるいは、貸主からの恩恵的な使用の形態であるもの等、その権利の実体にはかなりの差異がある。
使用貸借による権利に対しては、公共用地の取得に伴う損失補償基準第13条により、当該権利が賃借権であるものとして補償するものとなっている。
その権利価格の算定は、この権利が賃借権であるものとし、正常な賃借権価格を求め、その額に次の事項を勘案して適正に定めた割合を乗じて得た額と定めている。
① 当該使用貸借権が設置された事情
② 返還の時期
③ 使用及び収益の目的
④ その他の契約内容、使用及び収益の状況
また、公共用地の取得に伴う損失補償基準細則第3では、前記のように賃借権であるものとして評価した場合の3分の1程度を標準とするものとしているが、個々の権利の実体に応じその割合は必ずしも3分の1と限定されるものではない。
過去の裁決例は、おおむね3分の1を標準としつつも、0から60%と裁決された事例もある。
(3)裁決例及び判例
① 愛知県収用委員会昭和53年3月28日裁決
土地の使用借権者の有する建物はすでに老朽化が著しいとし使用借権に対する補償を零と裁決した。
② 東京地裁平成21年7月24日判決
建物敷地を使用し、固定資産税等の公租公課を負担するとした使用貸借について、関係当事者において使用収益権が補償の対象となるような経済的価値を有するものとの認識をしていなかったとして、使用貸借権の補償は認めなかった事例。
3.建物移転補償
建物の移転については、移転補償、動産移転料補償、仮住居補償などによる補償が行われるが、実際の移転においては、これらの補償に含まれない移転先選定費、登記手続費、移転通知費等の費用が必要となる。
建物を移転する場合一般的に支出が予想される経費(動産の移転に要する費用・借家人の移転に要する費用及び仮住居に要する費用等)の他に、支出が予想される細かい経費、すなわち移転先又は代替地等の選定に要する費用、法令上の手続に要する費用、移転通知費、移転旅費その他の雑費を総称したものを移転雑費といい、必要な限度で補償することになる。
そこで使用貸借土地上にある建物の補償について考えてみると、移転補償、動産移転料補償、仮住居補償(必要に応じて)などは補償することになるが、移転雑費の中の移転先の選定に要する費用は検討を要する。
「公共用地の取得に伴う損失補償基準」及び「公共用地の取得に伴う損失補償基準細則」から移転先選定に要する費用について、見てみることにする。
(1)移転雑費補償とは
移転雑費の補償については、公共用地の取得に伴う損失補償基準第37条に定めているが、その内容は土地等の取得又は土地等の使用に伴い建物等を移転する場合や代替地を取得する場合において、移転先や代替地の選定に要する費用、法令上の手続に要する費用、移転通知費、移転旅費その他の雑費を必要とするときは、通常これらに要する費用を補償するものである。
この場合において、当該建物等の所有者及び借家人又は代替地等を必要とする者が就業できないときは、営業休止、農業休止及び漁業休止に該当するものを除いて、それらの者が就業できないことにより通常生じる損失を補償するものである。
(2)移転先選定に要する費用
移転先選定に要する費用は、土地の取得又は使用により、建物等の移転を要する場合において、土地所有者又は借地権者が移転先の代替地を選定する必要があるとき、並びに移転建物の居住者が借家(仮住居を含みます。)を選定する必要がある場合に補償するものである。
移転先選定に要する費用は、補償対象地域の実情を考慮して、通常宅地建物取引業者に委託して選定するのが適当であると認められる場合、例えば建物等の所有者及び借家人が補償対象地域において、移転先地の数量が少なく、また、その情報が少ないこと等により詮索することが不向きと認められる場合は、委託報酬相当額(宅地建物取引業法46条に定める報酬額)及び選定に要する交通費等とし、建物等の所有者及び借家人が自ら選定する場合は、選定に要する交通費及び日当等とする。
要するに「建物等の移転を要する場合において、土地所有者又は借地権者が移転先の代替地を選定する必要があるとき」と限定されていることから、使用貸借土地上にある建物所有者は借地権がないので移転先選定に要する費用の対象とはならないことが分かる。
O公共用地の取得に伴う損失補償基準
(移転雑費)
第37条 土地等の取得又は土地等の使用に伴い建物等を移転する場合又は従来の利用目的に供するために必要と認められる代替の土地等(以下「代替地等」という。)を取得し、若しくは使用する場合において、移転先又は代替地等の選定に要する費用、法令上の手続に要する費用、転居通知費、移転旅費その他の雑費を必要とするときは、通常これらに要する費用を補償するものとする。
2 前項の場合において、当該建物等の所有者及び借家人又は当該代替地等を必要とする者が就業できないときは、第44条、第47条及び第51条に規定するものを除き、それらの者が就業できないことにより通常生ずる損失を補償するものとする。
○公共用地の取得に伴う損失補償基準細則
第21 基準第37条(移転雑費)は、次により処理する。
1 従来の利用目的に供するために必要と認められる代替の土地等とは、次の①から③までに掲げる土地等とする。
① 次の各号に掲げる手続等がとられていることにより、近い将来建物等の敷地の用に供されることが明らかであると認められる土地等の取得又は土地等の使用に係る空地(たな卸資産を除く。以下「建設予定地」という。)の所有者又は借地人が建物等の敷地の用に供するために当該建設予定地に代えて必要とする土地等
以下省略
2 移転先又は代替地等の選定に要する費用は、次により算定する。
① 建物等の所有者及び借家人又は前項に掲げる所有者、借地人若しくは耕作者が自ら移転先等を選定する場合(以下「自己選定の場合」という。)においては交通費及び日当に選定に要する日数を乗じて得た額とし、宅地建物取引業者に依頼して選定することが適当であると認められる場合(以下「業者選定の場合」という。)においては交通費及び日当に選定に要する日数を乗じて得た額に宅地建物取引業法(昭和27年法律第176号)第46条第1項の規定による宅地建物取引業者の報酬額に相当する額を加えた額とする。
(参考資料:「問答式 用地取得・補償の法律実務」 新日本法規)
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Posted by Seijun Kina at 18:39│Comments(0)